【実践編】ツーリングペースで楽しむ!快適ワインディング「はこね金太郎ライン」

コーナリング
ブレーキ
ライディングフォーム
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チーフライター
Kakeru Moriyama

二輪車安全運転指導員として14年ほどの実績。主に安全運転講習会で多くの受講生の方にアドバイスをさせていただいた経験を元に記事を発信しています。

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はこね金太郎ライン矢倉沢側

はこね金太郎ライン(神奈川県道731号矢倉沢仙石原線)は神奈川県の南足柄と箱根を結ぶ、全長約10.9kmのワインディングロードだ。

開通は2021年と比較的新しく、路面はきれいで走りやすい。しかし林道を整備して作られているため道幅は狭く、一部の大型車両は通行が禁止されている(乗車定員11名以上の乗用自動車、最大積載量3トン以上の貨物自動車は通行不可)。

所轄の警察署に確認したところ、法定速度は30km/h。ただし道路管理者である神奈川県により、安全速度20km/hの標識が設置されている。自然豊かな場所であり、野生動物も多い。山間の美しい景観が魅力の道ではあるが、同時に十分に注意して走るべき道でもある。

参考: はこね金太郎ライン - 神奈川県ホームページ (https://www.pref.kanagawa.jp/docs/m2g/hakokin.html)

安全速度20km/hの標識
安全速度20km/hの標識

この実践編は、モトカケルで説明しているテクニックや知識を、実際の道路でどう組み合わせ活用するか、示した記事だ。ただし、いわゆる攻略情報とは異なる。ここで紹介する走り方は、正解でもベストでもない。路面、天候、時間帯、交通量、車種など、条件が変われば選ぶべき判断も変わる。
この走り方をそのまま再現しようとしないでほしい。 ライダーがどのような状況で、どのような理由で、どう判断をしたのか、その一例として見ていただきたい。

※写真の撮影はオートバイの前方、中心より少し左寄りにカメラを固定して行っている。したがってライダーの目線とは異なり、また少し中心がずれている点にご注意いただきたい。

直線道路、動物の飛び出しに注意

きれいな直線道路である。対向車も歩行者もおらず、見通しも良い。ついスピードを出したくなるが、油断は禁物。安全速度が20km/hということに加え、茂みから動物が飛び出してくる危険性がある。「飛び出すかもしれない」 と構えて走ることが大切だ。いつでもブレーキをかけられるよう、しっかりしたニーグリップを確認しつつ、前方のコーナーを目指す。

コーナーに大きく入る左寄りのライン

コーナーの入り口付近。もしも速度が出すぎていたのなら、この時点で十分に減速を済ませておく必要がある。対向側の様子はブラインドになっていてわからない。そのため、左側から大きくコーナーへ入るラインを考える。自分側の走行領域を2分割して、その左側のゾーンを走るイメージだ。路肩ギリギリを走る、という意味ではないので、注意していただきたい。このラインならば、対向車に対して余裕を持たせることができる。

左寄りをキープしながらコーナリング

車体をバンクさせてコーナリング開始。対向側の向こうはまだ見えないので、左寄りを通るラインをキープする。目線は黄色い丸印のあたり。 コーナーの向こう側をのぞき込むような意識だ。もし真正面の赤い×印付近を見ていると、進行方向の様子がわからないためギクシャクしたコーナリングになりがちだし、対向車が来ても発見が遅れてしまうだろう。

コーナーの出口が見えた

コーナーの出口が見えた。どうやら対向車はいないようだ。次のコーナーに備えて、ラインをやや右側、自分側の走行領域の中央に戻す。

路面標示に注意

「歩行者注意」と書かれた路面標示があった。この上で急ブレーキなどの強い操作をすると、スリップの危険性がある。それを避けるためには、目線を先の方へ送って、異変をできるだけ早く察知することが必要だ。 今回は幸い、対向車も歩行者もいなかった。現在のラインを維持したまま、静かに路面標示の上を通過した。

カーブミラー

途中にあったカーブミラーを確認。写真では見えづらいが、対向車は写っていない。ただし確認できるのはほんの一瞬、見落としの可能性も十分にある。対向車がいないと決めつけて、ラインを右に膨らませることは避けたい。 現在の位置からなめらかに左側に寄りながらコーナリング。コーナーを出た時点で最も左に寄っている「小さく出る」ラインを目指す。

コーナー出口で小さく出る

コーナーの出口が見えた。コーナーを小さく出たため左に寄っていて、右側に余裕がある。この時点では対向車も見当たらないので、自分側の走行領域の中央に復帰するラインを考える。

スピードに気をつけて現在のラインを維持

気持ちの良い直線道路だが、動物が飛び出してくる危険もある。いつでもブレーキをかけられるようにニーグリップを確認して、現在のラインを維持する。

次のコーナーに大きく入る

次のコーナー手前まで来た。カーブミラーを見て対向車がいないことを確認(見落としの可能性もあるので過信はできない)。夏場で草が生い茂り、先が見づらいが、目線はあくまでコーナーの向こう側へ送る。茂みに接触しないよう、やや右寄りの大きく入るラインをとりたいが、対向側に寄ることになるため、十分な注意が必要だ。絶対に右側にはみ出さないように、慎重なコーナリングを行った。

注意喚起のペイントを発見

コーナーを抜けると長めの直線。しかし路面には注意喚起のための路面標示が施されている。つまりこの場所に、何らかの危険があるということ。十分な用心が必要だ。

坂の頂上で向こう側が見えない

実は直線は上り坂になっていて、頂上付近では向こう側が見えない状態だ。もし対向車がいきなり現れたら、ブレーキをかける必要があるかもしれない。それに備えて、ニーグリップを再度確認する。また頂上の手前では軽くブレーキをかけ、対向車の存在に備えた。

スピードバンプがある下り坂

頂上を過ぎた下り坂には、スピード抑制のためのスピードバンプが設けられていた。車体は上下にゆすられる。下り坂でスピードが上がらないように注意しつつ、ニーグリップでしっかりとつかまる必要がある。次のコーナーに備えて、左寄りの大きく入るラインを目指す。


ワインディングロードと言えば、どうしてもスピードを楽しみたい、というライダーも多いだろう。しかし速さを求めないからこそ、見えてくるものもある。路面標示、カーブミラー、茂みから飛び出してくる動物。そういったものに気づき、対応する、その積み重ねが、走りの余裕を作っていく。

20km/hの道は、退屈な道ではない。丁寧に走ることの楽しさを、教えてくれる道である。

さらに詳しいキーポイントを次のモトカケレッスンで説明している。ぜひご覧いただきたい。

モトカケレッスン

公道を走行する際は法令などを遵守の上、以下の点を守り安全運転につとめてください。 

  • 走行前に車両の点検を実施し、異常がある場合は無理に走行することは控えてください。
  •  ヘルメット・プロテクターなどの安全装備や、防護効果の高いライディングウェアなど適切な装備を着用してください。
  •  発進前には必ず後方の安全確認を行ってください。また周囲に他の車両が走行している状況では、急な進路変更や加減速などリスクのある走行は控えてください。

ここでは補足として、いくつかのキーポイントをまとめたい。

直線の道こそ注意しよう

本編にもいくつか出てくる、見通しの良い直線道路。写真を見る限り、対向車も自転車も見当たらない。これならスピードを出しても大丈夫、と考えるライダーもいるかもしれない。

しかしここは自然豊かな山間の道。周辺には多くの野生動物が生息している。とくにはこね金太郎ラインは、公式動画にもあるように、鹿の飛び出しが多い。茂みに潜んでいる鹿を走行中に察知するのは、ほぼ不可能。もしかしたら、と構えて走る以外に打つ手はない。

参考:【はこね金太郎ライン~歌で紹介編~】「はこね金太郎ライン」を知っていますか?? (https://www.youtube.com/watch?v=R_GS1aL8Jyw)

  • いつ動物が飛び出してきてもブレーキをかけられるように、しっかりとニーグリップをしよう。 警戒しすぎて緊張すると、手でハンドルにしがみつくことになり、逆効果だ。下半身で車体につかまり、腕はリラックスした状態を保つことが大切だ。
  • 目線を上げて、広い視野を保とう。 先の方へ目線を送ることで、左右の視界も広がる。万が一動物が飛び出してきたとき、一瞬でも早く発見できれば、対応の余裕が大きく違ってくる。

見通しが良いからといって、安全が保証されているわけではない。直線だから大丈夫、ではなく、直線こそ注意が必要、と考えるようにしよう。

直線路こそ、ニーグリップと目線を上げることが大切

狭い道でのライン取りを考えよう

モトカケルで説明しているコーナリングのライン取りは、「大きく入って小さく出る」が基本。いわゆるアウト・イン・アウトとは違う、走りに余裕を持たせるためのライン取りだ。しかしはこね金太郎ラインのように道幅が狭い道路では、必ずしも基本通りには行かない。たとえば左へ曲がるコーナーの場合、「大きく入る」ラインは道路の中央側へ寄ることになる。もし対向車がいたら、接触してしまうかもしれない。

必要な場合には、基本だけにとらわれず、現状に見合ったライン取りを考える必要がある。 たとえば本編の場合、路肩付近は落ち葉などがない、きれいな状態だ。そのため「少し左寄りを走って、対向車を避ける」という方針でラインを考えている。左コーナーの場合は「小さく入って小さく出る」窮屈なラインになってしまうが、そのかわり対向車に対する余裕を作ることができる。

もちろん、生い茂った草木が路上にはみ出していたり、自転車がいたりすれば、また違うライン取りになる。大切なのは、ライン取りを工夫することで、走りの余裕を作り出すこと。これをうまく決めるのも、オートバイを操る喜びの一つである。

走行ラインは状況に応じて調整

路面標示上での操作は慎重に

路面に施された速度指定や注意喚起の路面標示は滑りやすい。普通に走っている分には、まず問題はない。しかし不要な急ブレーキなど雑な操作を行えば、タイヤが滑ってしまう危険性が高い。たとえ安全速度の20km/hであっても、油断はできない。かといって、狭い道で路面標示をよけながら走るのは大変に危険だ。このようなときの原則は、「路面標示の上ではできるだけ何もしない」ことだ。

  • 路面標示の上では急なブレーキやアクセルの操作は控えよう。 そのような操作は、可能な限り手前で済ませておくか、渡り終わってから行うようにしよう。
  • コーナリングで車体がバンクしているときは、路面標示の上でバンク角を変えようとしない。 できるだけ現状を保ったまま「やり過ごす」ようにしよう。

常に目線を先の方へ送り、少しでも早く路面標示を発見し、減速などの対応をすることが大切だ。

路面標示の上はやり過ごす

スピードバンプへの対応は減速に加えてニーグリップが鍵

速度を抑制するためのスピードバンプ。スピードの出た状態で上に乗ると、結構大きく上下に揺さぶられる。ベテランでも怖い思いをすることがあるだろう。しかしコツさえわかれば、対応は難しくない。

  • もちろん、第一にスピードを抑えよう。 そのためにスピードバンプが設置されているのだ。ここは素直に、忠告に従おう。
  • しかし安全速度内であっても、スピードバンプによる揺さぶりは小さくない。だからニーグリップでしっかりと車体につかまるようにしよう。 膝でガソリンタンクを挟み込む。つま先は少し内側に向けて、膝が開かないようにする。かかとも車体に押しつけて、足の内側全体で車体につかまるようにする。そうすれば、多少揺さぶられても、体は安定しているだろう。
  • ニーグリップと合わせ、腕の力を抜いてハンドルを押さえつけないようにしよう。 大きな振動にびっくりしてハンドルにしがみついてしまうと、スムーズな操作ができなくなる。しかし腕の力が抜けていれば、いつもと同じように落ち着いてブレーキを操作することができるだろう。

はこね金太郎ラインは、起伏に富んだタイトなコーナーが連続する、テクニカルな道だ。ライダーは多くの判断を求められるため、免許を取ったばかりの初心者には少しハードルが高いかもしれない。しかし臆することはない。必要なのは基本的な操作を丁寧に行い、常にライダーの余裕を保つ走り方だ。

少し走ることに慣れてきた方は、機会があればぜひ訪れてみてほしい。丁寧に走ることの楽しさを、きっと実感できると思う。

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コーナリング・ブレーキ・ライディングフォームのよくある質問

制限速度より低い「安全速度」の表示がある場合、どちらに従えばよいですか?

制限速度は、法令上守るべき上限だ。一方で安全速度の表示は、その場所の見通しや路面状況などを踏まえた注意喚起と考えられる。制限速度より低い安全速度が示されている場合も、その意味を尊重し、状況に応じて十分に速度を落とすことが大切だ。

見通しの悪い狭いコーナーでは、どのようにラインを取ればよいですか?

対向車が現れることを前提に、対向側へ寄りすぎず、自分側の走行領域に余裕を残すことが基本だ。路肩の状態や歩行者・自転車の有無も確認し、必要に応じて自分側の左寄りを走ろう。カーブミラーは補助として使い、映っていないからといって安全だと決めつけないことも大切だ。

路面標示やスピードバンプがある場所では、どのように走ればよいですか?

路面標示の上では、急なブレーキやアクセル操作、急なバンク角の変更を避けたい。スピードバンプの手前では十分に減速し、ニーグリップで車体につかまりながら、腕の力を抜いて通過しよう。いずれの場合も、早めに発見できるよう目線を先へ送ることが大切だ。

普通に行っている発進の操作にも危険はあるのですか?

ある。発進の瞬間には、後ろからすり抜けてくる二輪車や見切り発車の四輪車などのリスクが潜む。慣れて後方確認を省くと、こうした危険を見落としやすい。

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発進時の後方確認には、安全確認のほかにどんな効果がありますか?

後続車への合図になる効果と、気持ちが切り替わる効果がある。振り返る動作で存在や発進意志を後続車に伝えられ、また漫然とした発進を防ぐ集中スイッチにもなる。

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ブレーキでタイヤがロックしたら、もう転倒するしかないのですか?

そうとは限らない。回復の余地はある。基本はあわてずブレーキを緩めることで、フロントとリアで対応が異なる。

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フロントタイヤとリアタイヤでは、ロック時の対処が違うのですか?

違う。フロントは車体が垂直なら一瞬持ちこたえることがあるので、すぐ緩めて落ち着いてかけ直す。リアは滑っても転倒しにくいが、急に緩めるとハイサイドの危険があるので車体が落ち着くのを待つ。

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コーナリングがギクシャクしてしまうのはなぜですか?

必要な操作をコーナーの中で慌てて行い、後手に回るからだ。突っ込んでから急ブレーキ、旋回中に傾け直し…となると、とてもスムーズには曲がれない。

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コーナリングをスムーズにする「直線での準備」とは?

コーナリングに必要な操作を、コーナーに入る前の直線部分で前倒しに済ませておくことだ。ニーグリップの確認、減速、ライン取りのイメージを直線のうちに終え、あとは進入して倒すだけにする。

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