直線道路こそ要注意!右直事故のリスクと「油断」の落とし穴

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チーフライター
Kakeru Moriyama

二輪車安全運転指導員として14年ほどの実績。主に安全運転講習会で多くの受講生の方にアドバイスをさせていただいた経験を元に記事を発信しています。

公開日:
直線道路で油断して走るライダー

見通しの良い直線は安全とは限らない。良すぎる見通しが油断を生み、右直事故につながる。今日からできる危険を回避する走り方を説明しよう。


ツーリング中、見通しの良い直線道路にさしかかったとしよう。目に入る限り対向車はいないし、横断しようとしている歩行者もいない。そんなとき、ついスロットルを開けてスピードを楽しみたくなってしまう ── 褒められたことではないが、ライダーであれば誰しも身に覚えがあるのではないだろうか。

言うまでもなく、スピードの出しすぎは法令違反であり、安全面からもリスクが高い行為である。だが、直線道路に潜む危険は、それだけではない。
ここでは、見通しの良さがかえって「油断」を生む点に着目したい。

直線道路では、遠くのほうまでよく見渡せる。だからチラリと見ただけで対向車がいないと判断したり、対向車がいても「まだ遠くだから大丈夫だろう」と考えたりする。つまり「油断」してしまう。
そしてそのように考えるのは、ライダーだけでない。対向車のドライバーや歩行者も同じように考え、油断するだろう。
お互いが油断していれば、もし不運にして出会ってしまったとき、事故につながる確率は高い。

直線道路の危険性は、データにも表れている。警察庁「二輪車の安全利用の促進」のデータを見てみよう。オートバイ死亡事故の種類をまとめたものだ。ご覧のとおり、右折対直進(直進二輪)── 交差点を直進するオートバイと、右折する車両がぶつかる、いわゆる右直事故 ── の事故数は全体の約4分の1を占める。出会い頭に次ぐ多さだ。

事故類型 死者数 割合
出会い頭 431 28.2%
右折対直進(二輪車直進) 394 25.7%
右折対直進(二輪車右折) 65 4.2%
正面衝突 217 14.2%
追突 181 11.8%
その他 179 11.7%
追越追抜時 64 4.2%

※警察庁「二輪車の安全利用の促進」より(https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/nirinsha-anzenriyou.html)

見通しの良い道路を直進するオートバイからは、右折してくる車両が見えているはずだ。なのになぜ、ぶつかってしまうのだろう。

オートバイ側の視点 : 対向車線に右折車両がいたとしても、直進優先の意識から「譲ってくれるはず」と思い込み、無防備に進むケースは多いだろう。またこちら側の車線にも右折待機車両がいたら、その陰になって対向車線が見えなくなってしまうこともある。

右折車側の視点 : オートバイは正面からは小さく見えるため、接近速度と距離の知覚が難しい。見えているのに「まだ遠い」と誤認してしまう。

結果として「対向車が来ているが、まだ遠いから大丈夫」「多分直進車はいないだろう」と誤って判断してしまい、右折を始めてしまう。

これが見通しの悪い交差点であれば、お互い、より注意して確認するかもしれない。しかし直線道路という安心感が、かえって判断を鈍らせる。油断をして、事故につながってしまうわけだ。

では、このような事故を防ぐには、どうしたらよいのだろうか。これはもう、具体的な用心を重ねるしかない。

たとえば対向車線に右折待機の車がいたら、「いきなり曲がってくるかもしれない」と警戒する。歩道に歩行者がいたら「飛び出してくるかもしれない」と用心する。その意識があるだけで、もし本当に右折してきたとき、ほんのコンマ何秒でも早くブレーキをかけることができるだろう。結果として事故を避けられない場合でも、数km/h 多めに減速できていれば、衝突の衝撃は大きく変わる。致命的な事故が、かすり傷で済むかもしれない。

オートバイに乗っている以上、交通事故のリスクをゼロにすることはできない。できるのは、リスクを少しずつ削っていくことだけだ。スピードを抑える。他車の動きをよく観察する。歩行者、自転車と十分に距離を取る。そして見通しの良い直線道路でこそ、なにかあるかもしれないと用心する。直線こそ用心、その小さな積み重ねが、あなたと周囲の命を守るのだ。

具体的な対応方法については、以下のモトカケレッスンで詳しく解説している。ぜひご覧いただきたい。

モトカケレッスン

公道を走行する際は法令などを遵守の上、以下の点を守り安全運転につとめてください。 

  • 走行前に車両の点検を実施し、異常がある場合は無理に走行することは控えてください。
  •  ヘルメット・プロテクターなどの安全装備や、防護効果の高いライディングウェアなど適切な装備を着用してください。
  •  発進前には必ず後方の安全確認を行ってください。また周囲に他の車両が走行している状況では、急な進路変更や加減速などリスクのある走行は控えてください。

見通しの良い直線道路を走っていても、事故などのリスクは決してゼロではない。油断せず走ることが大切だ。

  1. まず、ニーグリップをしっかりしよう。
    直線だからと言って緊張感ゼロの状態で走っていたのでは、万が一の事態に対応できない。しっかりしたニーグリップで、オートバイに下半身でつかまるようにしよう。

    • 膝をしっかり閉じてタンクを挟む
    • 足のつま先はやや内側に向けてニーグリップを補強
    • かかとでも車体をしっかりとグリップ
    • あわせて、上半身の力を抜いてリラックスする姿勢も保ちたい ヒールグリップの説明
  2. 目線を上げて情報量を増やそう。
    おへそを後ろに引くイメージで、お尻をシートに押しつけ、加重する。すると上半身がわずかに起き上がり、自然に目線も上がる。
    目線が上がれば、右折待ち・歩道の自転車・先の信号変化など、遠方の変化を早めに拾えるようになる。 目線の上げ方

  3. 何かあったら、スロットルを緩めよう。
    たとえば前方にある交差点の歩行者用信号機が点滅を始めた場合。車両用信号機はまだ青のままなのだから、わざわざ停止する必要はないだろう。しかしそこでスロットルを少しゆるめて速度を落とせば、せっかちな対向車が黄色信号に変わると同時に右折してくる、などいう事態が起きても、落ち着いてブレーキをかけることができる。
    直進側が優先であるのは確かだが、そこは抑えて。ほんの少し、スピードを落とすだけのことである。


さまざまな車両や歩行者が混在している公道には、一見安全そうに見える直線道路であっても、事故のリスクが潜んでいる。そのことを忘れずに走ることが大切だが、かといって「なにか起きるかもしれない」とビクビクおびえながら走るのもつまらない。
ニーグリップでオートバイにつかまり、視線を上げて視界を広く保てば、周囲の状況がとてもよくわかるようになる。周囲をしっかりと把握できれば、自然と安心感が拡がり、ライダーに余裕が生まれる。その余裕が安全・スムーズで、楽しいライディングにつながる。

そのようなライディングを身につけるために、モトカケレッスンをぜひ参考にしていただきたい。

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ライディングフォームのよくある質問

見通しの良い直線道路は、安全なのではないですか?

安全とは限らない。見通しが良すぎると、ライダーも対向車も歩行者も「大丈夫だろう」と油断しがちだ。お互いが油断していると、いざ出会ったとき事故につながりやすい。

右直事故を防ぐには、どうすればいいですか?

具体的な用心を重ねるしかない。対向車線の右折待ち車を「曲がってくるかも」と警戒し、歩行者を「飛び出すかも」と用心する。ほんのコンマ何秒早くブレーキできれば、被害は大きく変わる。

ブレーキが苦手な原因が操作以外にあるとしたら、何ですか?

目線の下がりすぎが原因かもしれない。緊張して縮こまると目線が下がり、視界が目の前だけになる。それがさらに緊張を生み、ブレーキが怖くなる悪循環に陥る。

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目線を上げると、ブレーキの何がよくなるのですか?

周囲がよく見えて安心感が生まれ、緊張がほぐれる。身体がリラックスして正確なブレーキ操作ができ、不意のブレーキにも落ち着いて対処できるようになる。

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コーナリングで「腕の力を抜く」のはなぜですか?

オートバイ本来の自然な動きを妨げないためだ。車体が傾くとハンドルは自然に切れる(セルフステア)。腕に力が入るとこの動きを邪魔し、うまく曲がれなくなる。

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腕の力は常に完全に抜くのが正しいのですか?

そうではない。完全に抜くのが正しいなら両手離しが理想という極論になるが、現実的でも安全でもない。大切なのは「抜く時は抜き、支える時は支える」という使い分けだ。

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乗り降りのときの立ちゴケを防ぐには、何を見直せばいいですか?

乗車・降車時の後方確認を見直すとよい。免許取得時には必ず行っていたはずだが、慣れるとおろそかになりがちだ。乗り降りは意外とシビアな動作で、リスクが高い。まずは安心してできることが大切だ。

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乗り降りの後方確認には、安全確認以外の効果もありますか?

ある。後方確認という動作自体が軽い集中状態を生み、「これから乗る・降りる」という気持ちの切り替えスイッチになる。動作が丁寧になり、漫然とした乗り降りによる立ちゴケを防げる。

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