9.9%しか着けていない重要装備。オートバイの胸部プロテクターが大切だと言われるワケ

ライディングウェア
基本テク
初心者
Profile picture for user nob_rachi
チーフライター
Kakeru Moriyama

二輪車安全運転指導員として14年ほどの実績。主に安全運転講習会で多くの受講生の方にアドバイスをさせていただいた経験を元に記事を発信しています。

公開日:
胸部プロテクターを着用したライダー

胸部プロテクターの着用率はわずか10%程度だ。だが事故の死者は胸部の損傷が約3割を占め、着用で致死率は大きく下がる。データから見える、強く推奨される理由を説明しよう。


オートバイに乗るとき、ライダーを守るための装備は必須だ。頭を守るためのヘルメットは、義務化されていることもあり、ほぼ100%のライダーが装着している。しかしもう一つの重要装備、「プロテクター」 についてはどうだろうか。

ツーリング先やショップで、プロテクター着用を推奨するポスターやチラシを見かけることは多い。ショップによっては専門のコーナーが設けられることもある。その存在が気になっているライダーも多いだろう。

しかし、実際に着用しているかどうかと言うと、少し話が違うようだ。

警視庁のデータによると、2025年現在、東京都内における 胸部プロテクター着用率は9.9%である。 つまり、10人に1人も着けていない。着用率は毎年少しずつ上がってきているものの、微増にとどまっている。
胸部プロテクター着用率の推移

なぜ、つけるライダーが少ないのだろう。同データの「胸部プロテクターを着用しない理由(2025年)」をみると、「着用が面倒」が44.0%、「値段が高い」が21.5%となっている。 たしかにうなずける。しかし、それほど強い理由というわけでもなさそうだ。プロテクター着用の必要性を、あまり強く感じてはいない、という風に見える。
胸部プロテクターを着用しない理由

しかし、事故のデータを見ると、着用が推奨される理由が浮かび上がる。

警察庁のデータで「損傷主部別 二輪車乗車中死者数」を見てみよう。事故で亡くなったライダーのうち、頭部の損傷が39.1%、胸部が29.1%となっている。 (令和2年〜6年合計)つまり、胸部の損傷が命を左右するケースが、非常に多いのだ。
損傷主部別二輪車乗車中死者数

これがプロテクター、特に 「胸部を守るプロテクター」が推奨される理由だ。

さらに、着用した結果もデータに表れている。警察庁のデータ「二輪車の安全利用の促進」の中の、「高速道路における二輪車乗車中のプロテクター着用状況別致死率比較」を見てみよう。「プロテクター着用無し」のときの致死率は、「着用あり」のときの 約1.7倍となっている。 プロテクターをつけるだけで、命を拾える可能性が大きく高まるのだ。

高速道路における二輪車乗車中のプロテクター着用状況別致死率比較
注:本グラフの『プロテクター』は胸部プロテクター(エアバッグタイプを含む)を指し、脊髄・肩肘・膝などは含まない。

ライダーが走り慣れてきて、テクニックが向上すれば、事故などのリスクを小さくすることができる。しかしどれほどスキルの高いライダーであっても、リスクをゼロにすることはできない。テクニックではどうしようもないこともある。そこを埋めるのが、ヘルメットや胸部プロテクターの役割だ。

最近では、ショップに行けばさまざまなプロテクターが売られている。商品の種類は多く、値段の幅も広い。手軽に購入できるものが、きっと見つかるはずだ。

これを機会に、プロテクターの着用を考えてみてはどうだろうか。具体的な種類や選び方については、以下のモトカケレッスンで説明する。ぜひご覧いただきたい。

出典:

  • 警視庁「二輪車利用者に対するヘルメット及び胸部プロテクターの着用状況調査結果」
  • 警察庁「二輪車の安全利用の促進」

モトカケレッスン

公道を走行する際は法令などを遵守の上、以下の点を守り安全運転につとめてください。 

  • 走行前に車両の点検を実施し、異常がある場合は無理に走行することは控えてください。
  •  ヘルメット・プロテクターなどの安全装備や、防護効果の高いライディングウェアなど適切な装備を着用してください。
  •  発進前には必ず後方の安全確認を行ってください。また周囲に他の車両が走行している状況では、急な進路変更や加減速などリスクのある走行は控えてください。

ひとくちにプロテクターと言っても、その種類は多い。ショップに行っても、どれを選べば良いのか、迷ってしまうだろう。ここでは「胸部を守る」という観点から、プロテクターの形状や特徴について説明をする。

  1. ジャケット内蔵タイプ
    ジャケットの胸の部分に、プロテクターが仕込まれているタイプ。取り外しや交換が可能なものもある。
    手軽に装着できるためか、他のタイプより普及率が高い。(2025年で50.0%がウェア一体型:警視庁「二輪車利用者に対するヘルメット及び胸部プロテクターの着用状況調査結果」)
    ただ、ジャケットと一体にするため、カバー範囲が小さめのものもある。夏用・冬用すべてのジャケットに、プロテクターが必要になる点にも注意が必要だ。
    入門用としては手軽だが、 予算の余裕があれば、分離しているタイプを検討しても良いだろう。
    ジャケット内蔵タイプ

  2. 胸部のみ保護するタイプ
    一枚のプロテクターで、胸部のみを守るタイプ。
    ある程度の大きさがあり、左右に分かれていないため、ジャケット内蔵タイプより広い範囲を守れるものも多い。
    あまりかさばらないので、今着ているジャケットの中に装着できるものもある。また値段も比較的安価で、購入しやすい。
    夏・冬でジャケットを変えても、プロテクターは使い回せるというメリットもある。
    ただし、守るのはあくまで胸部のみ。ライダーが放り出されて、背中から落ちた場合などには効果が薄い。
    手軽なので、とりあえずプロテクターを試してみたいライダーにおすすめだ。
    胸部のみ保護するタイプ

  3. 胸部と背中を保護するタイプ
    二枚のプロテクターで身体の前後を挟み、胸部と背部の両方を保護するタイプ。
    このクラスになると、プロテクション能力も高くなり、その分、値段も高めになる。
    多少高価になっても、しっかりしたプロテクションがほしいライダーにおすすめだ。
    なお、大きさは、かなりかさばる。ジャケットの下に装着するのであれば、サイズに余裕のあるジャケットを選び、試着して確かめるようにしよう。
    胸部と背部を保護するタイプ

  4. 肩を含め上半身全体を保護するタイプ
    胸部と背部に加え、肩の部分にもプロテクターを持つタイプ。
    高いプロテクション能力を持ち、一般向けというより、競技向けといえるだろう。
    ライダーが前方に投げだされると、肩を打って鎖骨を骨折することがよくある。そのようなときに、肩のプロテクションは心強い。
    値段も高価だし、それなりにかさばるため、ジャケットとの併用は難しいこともある。万人向けと言いづらいが、 高いプロテクションがほしいライダーには、魅力的だろう。
    なお、身体を覆う範囲が広いため、夏場にはかなり熱がこもる。導入の際は、熱中症対策もあわせて意識したい。
    上半身全体を保護するタイプ


ここでとりあげた以外にも、エアバッグタイプのプロテクター等、最新・高性能なプロテクターが次々と開発されている。
また胸だけでなく、肘や膝を守るプロテクターも数多くあり、いざというときのリスクを下げるのに効果的だ。

ぜひショップなどで実物を確かめ、検討してみよう。

次に読むレッスンはこれ!ライディングウェアの人気記事 TOP3

  1. お気に入りのウェアで走りだそう!ライディングウェアの選び方:まず押さえたい安全ポイント ライディングウェア   初心者
  2. 【目的別】オートバイのライディングブーツ選び方ガイド ライディングウェア   基本テク   初心者
  3. 「グローブは適当でいい」って思ってない?本当は大切なオートバイのグローブ選びのポイント ライディングウェア   基本テク   初心者

ライディングウェアのよくある質問

胸部プロテクターは、どのくらいのライダーが着けているのですか?

非常に少ない。警視庁のデータでは2025年現在、東京都内の胸部プロテクター着用率は9.9%で、10人に1人も着けていない。着用しない理由は「面倒」が最多だ。

胸部プロテクターが強く推奨されるのは、なぜですか?

胸部の損傷が命に関わるケースが多いからだ。警察庁データ(令和2〜6年合計)では二輪車乗車中死者の損傷主部位のうち胸部が29.1%を占める。着用は致死率の低下にもつながる。

ライディングブーツ・シューズを選ぶとき、何を重視すればいいですか?

防護性・動きやすさ・歩きやすさの3点だ。まず足を守る防護性を最優先しつつ、ペダル操作のための足首の動きやすさ、降りて歩くときの歩きやすさも押さえたい。

詳しくはこちら
オートバイに乗るのに、普通のスニーカーではダメなのですか?

おすすめできない。転倒時に足が受けるダメージは意外と大きく、ローカットのスニーカーでは足首の守りがない。少なくとも足首までしっかり覆われるものを選びたい。

詳しくはこちら
ヘルメットをかぶっていれば、あごひもはゆるくても大丈夫ですか?

大丈夫とは言えない。ゆるんでいると事故の衝撃でヘルメットが脱げてしまう。脱げてしまえばライダーを守れない。ヘルメットは「着用+あごひも」でワンセットだ。

詳しくはこちら
あごひもの重要性は、データにも表れているのですか?

表れている。警察庁の資料(令和2〜6年合計)では、ヘルメット着用ありの頭部損傷死者のうち、事故時にヘルメットが離脱したケースが39.7%(約4割)もある。

詳しくはこちら
グローブは適当に選んでも問題ないですか?

おすすめできない。グローブがライディングに与える影響は意外に大きく、レバーの操作感覚や転倒時に受けるダメージが大きく変わる。安心して走るためにこだわる価値がある。

詳しくはこちら
グローブを選ぶとき、何を押さえればいいですか?

防護性・動きやすさ・機能性の3点だ。転倒時に手を守る丈夫さをまず重視し、レバー操作を妨げないサイズ感、そしてスマホ操作対応や防水など自分の使い方に合った機能を選ぶ。

詳しくはこちら