バイクのタイヤ、スリップサインが示す、本当の意味とは?

メンテナンス
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チーフライター
Kakeru Moriyama

二輪車安全運転指導員として14年ほどの実績。主に安全運転講習会で多くの受講生の方にアドバイスをさせていただいた経験を元に記事を発信しています。

公開日:
オートバイのタイヤを点検するライダー

タイヤのスリップサインとは何か

スリップサインはタイヤの溝の中にある、摩耗限界を示す突起のことだ。タイヤが安全に使える最低限の溝の深さ(二輪車は道路運送車両法で0.8mm以上と定義)を示す目印である。使い続けてタイヤがすり減ると、やがてこの突起とタイヤ表面が同じ高さになる。これが「スリップサインが出ている」状態だ。危険なのはもちろん、溝の深さが0.8mm未満であれば法律にも違反してしまう。

「スリップサインが出てからタイヤを変えれば大丈夫」という意見を耳にすることもあるが、これは厳密には正しくない。スリップサインが出てしまったら、すでに法律違反に該当している可能性があるし、なによりタイヤの性能は大幅に低下している。スリップサインが出る前に、余裕をもってタイヤ交換をしておくことが大切、これがスリップサインが示す本当の意味である。

参考:国土交通省「道路運送車両の保安基準の細目を定める告示」(https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/S089.pdf)

タイヤの状態は、ぱっと見た目では判断しづらい

タイヤは、オートバイが地面と接する唯一の部品だ。車体の重量を支え、路面からの衝撃を受け止める。ライダーの意図どおりに曲がり、止まり、エンジンの力を確実に路面へ伝える。タイヤに異常があれば、走行そのものが難しくなる。とても大事な部品なのだ。

しかし、タイヤなどはあまり気にしない、というライダーも多いだろう。普段は放置したまま、定期点検のときに思いがけずタイヤ交換をすすめられ、その金額の高さに驚いた、という経験はないだろうか。

その理由の一つは、タイヤを一見しただけでは異常に気づきづらい、ということがあると思う。タイヤは、けっこう複雑な構造をしている。路面と接する「トレッド」、タイヤの端の「ショルダー」、側面の「サイドウォール」といった部分に分かれていて、このうち主にすり減るのは、路面をとらえるトレッドだ。ほかの部分はあまり減らないので、長く使ったタイヤでも見た目の形は意外としっかりしていることが多いのだ。

だが肝心のトレッドが摩耗していれば、タイヤはもう正常に働かない。だから見た目の印象だけで決めず、スリップサインなどのわかりやすい基準に基づいて、きちんと点検することが大切だ。

では、スリップサインの見方を説明しよう

まず、スリップサインを見つけるには、タイヤの側面(サイドウォール)に刻印された三角マーク「▲」などを探すとよい。この印の延長線上、溝の中にスリップサインがある。

スリップサインは、タイヤの中心だけにあるわけではない。直進中に接地する「センター」、コーナリング中に接地する「サイド」など、何カ所かに用意されている。チェックのときは、その複数のサインをまんべんなく見てほしい。オートバイの乗り方によって、センターとサイドでは減り方が変わってくるからだ。

どこか一カ所でもスリップサインが出そうなら、そのタイヤは交換が必要だ。「サイドはあやしいけど、まっすぐ走る分には大丈夫」というわけにはいかないのだ。

スリップサインの見方
目印となる三角形の延長線付近、溝の中にある突起がスリップサインだ。この写真では少し見づらいが、2つのスリップサインが配置されている。

そのほかの、タイヤの点検項目

タイヤの点検項目は、摩耗だけではない。ほかにも、「空気圧」「釘などの異物が刺さっていないか」「表面のひび割れ」などがある。それらについては別の記事があるので、ぜひご覧いただきたい。

オートバイの楽しさは、正常なタイヤが支えている

タイヤがすり減りすぎると、少しの砂や雨でもグリップを失いやすく、転倒のリスクがぐっと上がる。仮に転ばなくても、性能が落ちたタイヤでの走行はどこか不安がつきまとう。そうなると、オートバイ本来の「走る楽しさ」まで薄れてしまう。そうならないためにも、ときどきスリップサインをチェックする習慣をつけておこう。新しいタイヤに替えると、オートバイの走りは驚くほど元気を取り戻す。その手応えがライダーに余裕を生み、それが安全でスムーズ、そして楽しいライディングにつながっていくだろう。

モトカケレッスン

公道を走行する際は法令などを遵守の上、以下の点を守り安全運転につとめてください。 

  • 走行前に車両の点検を実施し、異常がある場合は無理に走行することは控えてください。
  •  ヘルメット・プロテクターなどの安全装備や、防護効果の高いライディングウェアなど適切な装備を着用してください。
  •  発進前には必ず後方の安全確認を行ってください。また周囲に他の車両が走行している状況では、急な進路変更や加減速などリスクのある走行は控えてください。

タイヤのスリップサインのチェックは、位置さえわかれば簡単だ。具体的に説明しよう。

  1. 点検は明るい場所で行おう。 暗がりだとスリップサインが見づらくなってしまう。
    また前後にオートバイを動かすこともあるので、少し広さに余裕のある場所が望ましい。たとえばガソリンスタンドで給油するときなどに、ついでにチェックするといいだろう。(ただし長時間居座ったり、まわりの迷惑にならないように注意。)

  2. まずタイヤの側面(サイドウォール)についている、小さな▲印を探す。(タイヤメーカーによって表記が異なる場合もあるので注意。)その印の延長線付近で、溝の中を見ると、小さく突起している部分がある。それがスリップサインだ。
    タイヤによっては、正確に印の延長線上にスリップサインがない場合もある。大まかな目印、くらいに考えて探してみよう。

  3. スリップサインが見つかったら、タイヤ表面との段差を確認しよう。
    段差が少ししかない場合は、タイヤ交換を検討しよう。段差がまったくない状態なら、すぐに交換しなければならない。(道路運送車両法に違反する可能性がある。)

    正常なスリップサイン
    スリップサイン。溝の深さがしっかりと残っている状態だ。

  4. チェックは一カ所だけでなく、複数のスリップサインを見るようにしよう。 そのためにはオートバイを前後に動かして、タイヤを少し回転させると良い。
    タイヤのセンター部分は大丈夫でも、サイド部分がすり減っている、ということもある。複数のスリップサインのうち、最もすり減っている場所を基準に判断しよう。

    すり減っている時のスリップサイン
    センターのスリップサイン(写真左)は多少の余裕があるが、サイド部分(写真右)がかなりすり減っている。交換を検討すべきだろう。

  5. スリップサインのチェックが終わったら、ついでに他の項目もチェックすると、なおよい。
    スリップサインのある溝の中やサイドウォール部分にひび割れなどがないか。タイヤの空気圧は正常か。釘などの異物が刺さっていないか。
    慣れれば1分もかからない簡単なチェックだ。ぜひ実施する習慣をつけよう。


オートバイのタイヤは必ずすり減るものだが、かといって一気に減るわけではない。時間をかけて少しずつすり減るため、なかなかその変化に気づきにくい。だから意識的にチェックをすることが大切になる。チェックを行い異常がなければ、ライダーは安心してオートバイに乗れる。その安心が、安全でスムーズ、そして楽しいライディングにつながる。

ぜひ今日から、タイヤをチェックする習慣を始めてみよう。

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メンテナンスのよくある質問

スリップサインとは何ですか?

スリップサインは、タイヤの溝の底から0.8mmの高さに設けられた、摩耗限界を示す突起だ。タイヤがすり減り、スリップサインとタイヤ表面が同じ高さになったとき、残り溝は0.8mmに達している。そうなる前に、タイヤを交換しなければならない。

スリップサインが出るまでは、タイヤを交換しなくても大丈夫ですか?

スリップサインが出ていれば、溝の深さは0.8mm以下になっている状態だ。実際には誤差もあるだろうから、0.8mm未満になっている可能性が高く、これは法律違反となってしまう。

またスリップサインが出るまで摩耗したタイヤでは、本来の性能を発揮できない。だからスリップサインが完全に出てしまう前に、余裕を持ってタイヤを交換するのが安全だと言える。

スリップサインはどこを見ればわかりますか?

タイヤ側面の三角マーク「▲」を探し、その延長線上の溝の中を見るとよい。(車種によって異なる)サインは中央だけでなく、直進で接地するセンターや、コーナーで接地するサイドなど複数箇所にあるので、まんべんなく見たい。

一カ所だけスリップサインが出ていても交換が必要ですか?

必要だ。「サイドはあやしいがセンターは大丈夫」とはいかない。どこか一カ所でもスリップサインが出そうなら、そのタイヤは交換のサインだ。

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